メタボリック症候群
メタボリック症候群は昔でいう生活習慣病とまず同じと考えてもらってよいと思います。定義は下の表にあるようになりますが、高血圧と脂質異常と糖尿病が主な対象疾患になります。
がんが成人の大きな死因になる以前は、脳血管の障害と心筋梗塞が死因上位を占めていました。
これら疾患はメタボリック症候群によって引き起こされますので、予防としてはメタボリック症候群に属する疾患群を早めに診断し治療することが有意義であることがわかります。
そのため、国は特定健康診査(皆さんが市民健診と呼んでいる検診)を国民に提供するように努めているのです。
特定健診の受診率は年々上がっては来ているものの、全国平均では53%にとどまっています。大阪府は直近のデータでは50%程度の受診率です。国民の約半数がメタボリック症候群の診断治療機会を失っておられるのは残念な限りです。
ちなみに、実際のところ特定健康診査をうけるとどれくらいのメリットがあるのでしょうか。2008年のデータ解析の結果ですが、検診結果を踏まえて適切に治療を行えば、未治療のメタボリック症候群関連疾患の発症を30%抑えることができることが示されています。すごい予防効果ですね。
さて、これからメタボリック症候群の説明をしていきますが、そもそもメタボリック症候群であると、なにが悪いのでしょうか。
高血圧は文字通り血圧が高いことで、血圧が高いためまずポンプである①心臓に負担をかける(心不全など)だけでなく、常に高い血圧がかかっている全身の臓器血管の損傷(動脈硬化)がすすみ、②臓器障害(腎障害・目の障害・脳の障害など)を引き起こします。
脂質異常症というのは悪玉コレステロールや中性脂肪が高い場合を指し、以前は高脂血症と呼ばれていました。この疾患では血管が動脈硬化を起こしやすくなるため、血圧が上昇(高血圧)したり、臓器の血流が悪化したり出血しやすくなったりします(脳梗塞・脳出血など)。
糖尿病では、全身の小さな動脈に損傷が起きます。糖尿病患者さんは高血圧や脂質異常を合併することが多く、さまざまな臓器障害の原因になっています。糖尿病の有名な障害としては①腎②神経③眼があげられます。
60歳以上で透析が必要になる患者さんの大半は糖尿病が原因であるといわれていますし、また網膜の障害から視力を失う方もおられます。