高血圧症
高血圧症の定義と目標の血圧について
文字通り血圧が高いことですが、たまたま測った血圧が高い場合は高血圧症とは言いきれません。日常的に血圧が高い場合を病的であると判断します。
血圧は高いほう(収縮期血圧といいます)と低いほう(拡張期血圧といいます)で判断します。
血圧の測定方法
血圧は環境や体調によって常に変化し続けるものです。寒いとき、緊張したとき、運動したときに血圧は上がります。そのためいろいろな状況で血圧を測ることが望ましいと考えられています。
家庭で測定していただく家庭血圧の数字は血圧診療を行っていくうえで大変参考になります。
家庭での血圧測定法の注意事項を記します。
- ①測定する前に2分間、座って安静にしましょう。
- ②朝なら起床1時間以内が、夜なら就寝前がよいとされています。
- ③朝の測定では薬を飲む前、排尿後、朝食前がお勧めです。
- ④測定回数は原則1回。2回測定した場合はその平均を記録します。
血圧が高くなるしくみ
人間が十分に塩を取れるようになってからの期間は、人間の歴史の中では大変短いものです。塩分の欠乏は生存の危機につながるもので、どうしても体内に塩分を蓄える方向に向かいます。日本人の場合、食塩により血圧が変動しやすい食塩感受性のある方は高血圧症の中で約半数存在すると考えられます。
食塩が体内で過剰になるとそのままでは塩分が濃すぎるため、水分をためることでバランスを取ります。つまり水分過剰の状態になり、水分と食塩を排出するため血圧が上昇します。このまま高い血圧が続くと血管は血圧に対抗するために血管の壁を分厚くします。結果、血管が硬くなり、より血圧が上昇してしまうことになります。
思い切っていうと血圧は体液量と血管の硬さで決まるものといえます。つまり、血圧をコントロールするためには体液量を減らすことや血管の硬さを和らげることが必要だと言い換えることができるということです。
高血圧症の治療はこのような考えに基づいて生活習慣の指導や薬剤の選択を行っています。
高血圧症はなぜからだによくないのか
血圧が高いことは脳や心臓、腎臓の病気に大きな関連があります。大規模なデータ解析や国内の多くのデータ解析の結果により120/80mmHgを超えると上記の臓器の血管障害による死亡が増加することがわかっています(高血圧治療ガイドライン2019より)。
メタボリック症候群の解説の部分でも記載していますが、いわゆる市民健診といわれる特定健康診査による早期治療介入によりメタボリック症候群の発症を30%も抑制しているという結果を踏まえますと、的確な治療がいかに有効で重要かが理解できると思います。
薬剤による治療法
大きく3種類に分類されます。過剰な水分を除去して体液量を減らし血圧を下げる薬(利尿剤など)、血管を拡張させて血流の抵抗を下げ血圧を下げる薬(カルシウムブロッカーやARB、ACE阻害薬など)、心臓の過剰な動きを抑制して血圧を下げる薬(βブロッカーなど)が主要な薬剤となります。詳しくはご相談ください。
高血圧治療の考え方
どのような薬剤による治療もそうですが、特に高血圧症など生活習慣が密接に関係している疾患は、薬もさることながら、生活習慣の改善が治療に大きな役割を果たします。なかなか、生活の習慣を変えることは難しく、ついつい薬のみに頼ってしまうことも多いように思いますが、生活上の良くない習慣を改善しないままでは薬の効き目も十分に発揮できなくなります。
とはいえ、すべてを生活習慣のみでコントロールすることも実際は困難です。一線を越えてしまった疾患に自力だけで対応するのは無理がありますので、生活習慣とのバランスを考えた投薬治療を行います。